104歳の現役医師・日野原先生によると、戦前のアメリカで最も知られていた3人の日本人は昭和天皇、東条英機(首相)、賀川豊彦の3人だという。当時の首相は、重臣の進言をもとに天皇が首相を指名する仕組みだったので、日米開戦を主張する陸軍内部の強硬派を抑えるために、東条陸軍大将を指名した訳であるが、結果として失敗した。
最近ある新聞で何十年ぶりかで賀川という名前を見て、古い記憶が脳裏をかすめた。高校時代に彼の講演会があったからだ。前後に講演会のあった先輩でもある小説家芹沢光治郎の場合はとても身近な感覚だったので若干内容まで記憶しているが、賀川の場合は内容について全く記憶していない。調べてみると、明治21年生まれの賀川は、アメリカのプリンストン大学で神学を学び、外に労働問題なども研究した。帰国後神戸の貧民くつ(スラム街)に住んで、京大の医学生を中心として無料診療所を開設し、労働組合、販売組合などのリーダーとしてボランティアという言葉の無い時代の先駆者として活躍した。日本全体として考えると宗教心のうすい国民性であるが、賀川豊彦のような世界に名を残した著名人のいたことは嬉しいことだ。